プロフィール 大阪府出身。10歳の時に生まれた妹の面倒を見たことをきっかけに、保育士の道を志す。必要資格の取得後に大阪府の保育園に就職し、そこで10年間の経験を積んだ。その後、「理想の保育を実現する」という高い目標のもと、滋賀県守山市に『フェリーチェ荒見保育園』を設立。“幸せ”を提供できる施設づくりに力を入れている。
滋賀県守山市で環境づくりに力を入れた保育園を運営する、特定非営利活動法人フェリーチェ。理事長の畑昌平氏はイタリア語で幸せを意味する″フェリーチェ″という言葉を掲げて、子どもたちにとって″理想の保育″を追及している。施設や食事、人員の配置、おもちゃにまで気を配る畑理事長が方針とするのは、「オーダーメイド保育」。子どもたちの主体性を育むことが出来るというその方針について、詳しくうかがった。
奔走の末、理想の保育園を実現
畑山 特定非営利活動法人フェリーチェさんは、認可保育園を運営しているそうですね。畑理事長ご自身は、なぜ保育士になろうと思われたのでしょうか。
畑 私が10歳のときに、妹が生まれたことがきっかけです。年の離れた妹を世話する中で、保父になりたいという思いが芽生えてきたんです。当時、男性保育士はほとんど認知されていませんでしたが、勉強を重ねて保育士の資格を取得しました。その後、大阪の保育園に就職し、現在では幼稚園教諭二種免許と訪問介護員2級、社会福祉主事任用資格も有しています。
畑山 それはすごいですね。そこから独立までの経緯というのは?
インタビュアー 畑山 隆則(元ボクシング世界王者)
畑 大阪で10年間保育士として経験を積んだことで、保育理念が養われてきたので、独立したいと考えるようになったんです。それから2年間は、役所や不動産会社を訪ね、銀行にも融資のお願いをして、保育園をつくるための場所探しをはじめとする開園の準備を進めました。どこも飛び込み営業のような突然の訪問だったので、相手側には驚かれたと思います。でも、どうしても理想の保育を実現できる施設をつくりたかったんですよ。そうしてついに開園した今、受け入れてくださった皆様には、本当に感謝しています。
畑山 畑理事長の熱意が溢れていたからこそ、この施設は実現したのでしょうね。「フェリーチェ」という名前には、どのような意味があるのですか?
方針は「オーダーメイド保育」
畑 フェリーチェはイタリア語で「幸せな」という意味があります。以前から、幸福度ランキングで日本が低すぎる位置にランクインしていることが気がかりで、こんなにも恵まれている国なのになぜなのかずっと疑問に思っていました。人それぞれ幸せの形や定義は違いますが、子どもたちや親御様、そしてスタッフなど、フェリーチェに関わる人全員に、何かしらの幸せを感じてもらいたいと考えたんです。
畑山 設備からおもちゃまで、子どもたちの健康や安全、発育を考えて用意されているんだ。ここまで行き届いた認可保育園は珍しいですよね。
畑 今までは認可保育施設というと、100人、200人いるのが主流でしたが、少人数の認可保育施設のほうが、より手厚い保育ができるんですよ。年齢にもよるものの、国の基準では子ども19人(0歳児3名、1歳児8名、2歳児8名、合計定員19名)だと4名の保育士でいいところを、フェリーチェでは7名の保育士で見ています。
畑山 へぇ~、それは安心だ。それならしっかり触れ合えるでしょうし、子どものほうも家庭にいるような感覚が味わえますね。
畑 当保育園では、オーダーメイド保育を方針にしていまして。子どもたちは各々特徴があって性格も異なりますから、当然、保育の仕方も一人ひとりに合わせていく必要があります。フェリーチェでは、子どもたちを大人の決めた型にはめ込むのではなく、小さな訴えから子どもたちが真に求めていることを感じ取り、それぞれに合わせた保育を提供しているんです。
主体性を養うために
畑山 そもそもなぜ、オーダーメイド保育を方針にしようと考えられたのでしょうか?
畑 私どもは、「保育士は子どもが自ら幸せを掴むための支援者である」と考えています。つまり保育士の役割は、子どもに何かを押し付けて行動させるのでなく、何に興味を示し、何がしたくて、何を求めているのかを汲み取り、それを子どもたち自身の力で実現できるように支援することです。子どもたち
も主体的に行動する経験が身についていくと、自然と能動的な思考をするようになりますから。
畑山 自分の力で判断する能力が養われれば、将来、自分で目標を立てて行動できるようになる。それはまさしく自らの力で“幸せ”を掴み取ることにつながりますよね。畑理事長は、それを目指しているわけだ。
畑 おっしゃる通りです。幸せを感じてもらう重要なことの一つに、“達成感”があります。フェリーチェでは、子どもたちにそれを感じてもらうべく、食育にも力を入れています。
畑山 どのような食育をされているのですか?
畑 目指しているのは、「完食できた」という感覚を覚えてもらうことです。日本では、「もったいない」精神が深く根付いていて、出されたものは残してはいけないという風潮があります。もちろんこれは大切なことですが、やり方を間違えば無理やり食べさせることになり、食事が嫌になってしまう大きな要因にもなりえる。そうならないよう、子ども一人ひとりの食の嗜好を理解し、栄養バランスも配慮したうえで、おいしい食事を提供しているんです。そうして子どもたちが、「完食できた!」という達成感を日々感じて、食の楽しみを知るようになると、苦手だった食べ物を含めて、いろんなものを自ら進んで食べてくれるようになります。
畑山 つまり、そこでも主体性を養っていくわけなんですね。
畑 そうなんです。ちなみに当園では、食べ物そのものの味を感じてもらうために、無添加の食材を使用しています。添加物の味に慣れてしまうと、添加物なしの食生活に戻れなくなってしまう。だからせめて保育園で食べるものだけでも、無添加のおいしさを感じてほしいのです。その分経費はかさみますが、これも子どもたちのために大切な取り組みだと思っています。
畑山 すごいなぁ。これほどまでに子どもたちのことを考えて環境づくりをして、寄り添ってくれる方はなかなかいないと思います。これからも子どもたちの未来のために、思いのこもった保育を続けてくださいね。
【事業所概要】
■事業所名 特定非営利活動法人フェリーチェ
■所在地 〒524-0016滋賀県守山市荒見町225-10
■事業内容 認可保育園 フェリーチェ荒見保育園の運営
■設立 平成27年12月
■従業員数 10名
■ホームページ
畑山 素敵な意味が込められているんですね! 内装もアットホームな印象で、幸せを感じさせる空間になっていると思いますよ。
畑 ありがとうございます。設備も極力自然のものを使用するように心がけていて、壁の一部や床材は無垢板を使って木のぬくもりを肌で感じられるようにしています。特に力を入れているのはおもちゃで、ヨーロッパ製を中心に置いているんですよ。なぜなら子どもの発達を最優先に設計されているものが多く、日本よりも安全基準が厳しいため、より安心して遊んでもらえるからです。